30歳からの音楽留学【後半】

30歳からの音楽留学後半を書いていきます。

⑥基礎の再習得

留学の大きな目的は腱鞘炎問題を解決することにあったのですが、腱鞘炎解消イコールテクニックの基本を見直すという、その目的は達成されました。

その目的が達成できた要因は3つあって、1つ目は、学生の身分だと紹介や直談判などでいろんな先生に教えを乞うことが出来る、です。脱力やタッチの問題は、口では簡単には言えますが、実際問題、出来てる人がどのような感覚で身体を使っているのか、音を聴いているのかは身体や脳を入れ替えないと分からないです。なので、結局は試行錯誤しながら自分で解決していくしかないのだと思います。その時に、私の場合は、色んな先生のご意見を伺いながら少しずつ腱鞘炎にならない弾き方を身につけていきました。

2つ目の要因ですが、すでに自分で問題解決に向けて試行錯誤をしていたので、多少の知識があった上で、直感的に、教えてくださる先生のアドヴァイスが自分に適しているかどうかを判断できたことが大きかったです。これは、大人になってから留学して良かったなと思ったことの1つです。先生方の言葉のチョイスも伝え方も考え方も千差万別で全てをそのまま鵜呑みにしても上手くいきません。その言葉の裏にあるもの、根底では何を伝えてようとしているかを考えて、自分に落とし込んでいくことが大切です。その判断が、自分の場合は若かったらまだ出来なかっただろうなと思います。

最後3つ目は、時間!もう本当に朝から晩まで全て自分の勉強や練習のために時間を使えたことです。時間と根気がいる作業で、先生のサポートをしっかり受けながら、時間に縛られることなく基礎を正すべくピアノに向かえたことは、この上なく貴重なことでした。

⑦世界のピアノ上級者のレベルを肌で感じる

もちろん日本でも猛烈に上手い人というのはたくさん見てきていましたが、海外に出て改めて、ピアノ人口の多さと、みんなそれはもう真剣に向き合って練習して舞台に臨んでいる姿を見て、ある種、良い意味でのあきらめといいますか、客観的に自分を見る目を持つことができました。この年齢になって遅いとは思いますが、私の場合はそうなるまでに時間がかかりました。

私個人の見解ですが、現実問題、やはり天才には凡人の100の努力も敵わない、というように思います。次元が違うんですよね。。ただそこで、凡人の努力が無駄なのかというと、そうではなくて。。その努力で培ってきた知識や経験を使って自分を役立てて社会に還元していけるのではないかなと思います。

もちろん、そうなるとすごい人達のすごさを改めて目に見えて分かりだして、羨ましいなぁ!と度々思うんですけどね。

⑧作曲家の生きた国を体感する

クラシック音楽というのは、100年200年と昔に作られた曲ばかりなので、何か曲を弾く時は、残っている文献などから作曲家の人柄や人生のどの時に作られたか、その時代のその国の状況などからイメージを膨らませて音楽作りをしていきます。そこで、その当時に戻ることは出来ないけれども、その作曲家が使っていた言語でその国の人たちと話して国民性を感じたり、生きてた国に身を置いてご飯を食べたりその街並みを歩いてみる、作曲家が昔住んでいた家や使っていた楽器を自分の目で見てからつむぎ出される音は、それらを体感する前とは全く違ったものになっていると思います。感性が鋭くなり、これまでとは違った視点や感覚を持つことが出来るようになります。

もちろん若い頃にそのような体験をした方が吸収できるものは大きいかもしれませんが、そうは言っても時間は戻せませんし、色々な経験や勉強を経て大人になってからそれらを知るということは、改めて、目から鱗が落ちるような、、ピアノを弾きながら見えてくる景色が違うというのはなんとも言えない感覚でした。

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以上、30歳からの音楽留学につい書いてみました。

私自身、ずっと若いころから海外に行きたいとは思っていたのですが、勇気が出ずになかなか実行に移せずに年を重ねていきました。ですが、ある時、行こう!と決断してから動き出して30歳になってようやく留学という夢を実現することが出来ました。留学前も留学中もたっくさんの人に助けてもらいながらなんとか生きながらえたお陰で、より音楽が好きになり自分のことも少しは好きになりました。あの時、年齢の壁に負けずに乗り越えて本当に良かったと心の底から思います。今後は、自己研鑽を続けながら生徒さんや周りの関わってくださる方たちのお役に少しでも立てればいいなと思います。

30歳からの音楽留学【前半】

私個人の話ですが、30歳になってからの音楽留学について書いてみたいと思います。

…30歳で音楽留学

と聞くと、え?遅くない?というのが普通の反応だと思います。

音楽留学というと、高校〜大学卒業あたり、遅くとも大学院を卒業した20代前半頃には、、というのが一般的かなと思います。早い子は小学生の時には日本を出て海外に勉強に行く子もいます。

なぜ音楽留学するなら早めに、かというと、やはり若いうちの方が、あらゆる面、例えば、テクニック、音楽性、意識の改革などの面に置いて、伸び代がながーーいというのがあるかと思います。

このことについては今後の記事で書きます。

30歳から音楽留学、何を今更。。この考えが頭をよぎり続けましたが、そこからは目を背け続けました笑  

逆に、今しかない!という思いの方が強かったかもしれません。

そして無我夢中でこの歳での留学、ということにまずは漕ぎ着けることとなったのです。実際に留学しようと決意して動き出したのが28歳の時でしたが、仕事も簡単に辞められるわけではないし、山盛りの準備などでかなり時間がかかりました。

実際に留学して得られたものは、、、

今後の生き方を揺るがすほど大きかった!!

です。

①テクニックの改善
②豊富な演奏経験
③外国語の習得
④凝り固まった価値観の崩壊
⑤自己肯定感の向上
⑥基礎の再習得
⑦世界のピアノ上級者のレベルを肌で感じる
⑧作曲家の生きた国を体感できる

①テクニックの改善

そもそも留学したいとずっと思っていた大きな理由の一つが、ピアノを弾くテクニックの改善でした。

腱鞘炎を発症してしまうピアノの弾き方を改善すべく、自分で本を読んだり、動画で検証したり、改善の手助けをしてくれる先生を探してレッスンを受けさせてもらったりしていたのですが、なかなか糸口を見出せず、、海外までその手を伸ばしたときに出会ったのがアキレス・デル・ヴィーニュ先生。その先生に腱鞘炎の原因が手ではなく、頭にあるということを指摘され、その先生の勧めでイタリアで勉強することになりました。

レギュラーのレッスンをしてくださっていたのは、弟子のカルロ・パレーゼ先生。脱力して音を1音出すことから始まり、後に打鍵の根本を教えてくださったステファノ・フィウッツィ先生のおかげで、今では手の痛みが生じない弾き方ができるようになりました。また、私がレッスンする立場になった時に、手に負担がかからない弾き方、痛みが生じてしまったときの原因の解明ができるようになった事が本当に大きな財産となっています。

ピアノを弾くことが”苦”ではなく、喜びに変わったほどテクニックの改善は私にとっては重要で、留学して、自分に合った素晴らしい先生に出会ったこと、改善する時間を得られたこと、また良い音、響を聞く耳が持てるようになったことが人生を揺るがす大きな収穫となったことは間違いないです。

②豊富な演奏経験

留学ということでまた学生、という立場に戻った訳ですが、まず思ったことは

学生という立場って、なんて恵まれているんだ!∑(゚Д゚)

ということです。

学校に入れば、自動的に演奏機会がたくさんやってきます。学校の試験や演奏会はもちろんのこと、コンクールなどの情報も友達や先生からたくさんもらえるし、室内楽や伴奏、コレペティをやる機会も自ら探して行かなくても居るだけでいただけるというのは、本当にありがたいことでした。

また、コンサートで弾くにあたって、宣伝も集客も場所をおさえるのも全てオーガナイズしていただけるなんて、、ありがとう!!の極みです笑

③外国語の習得

やはり海外に住むということは、外国語を習得できる絶好の機会!でもあります。もちろん、日本にいても外国語の勉強は出来ますが、交通機関の利用、買い物、カフェ、病院、銀行などなど生活の全てを外国語でやっていくというのは、海外にいないと実現しないことで、必死さと質と量に置いて身に付く速度が全く違います。

もちろん、学校に入ったら授業も教授や友達とのコミュニケーションも全て現地の言葉ですし、学校に入るにもインタビューがあったり、事前に語学のレベル証明をしなければならない学校もあるので、それこそ必死で準備もすると思います。

究極のインプットアウトプットの繰り返しが出来るのは海外ならではですね。

あとは、トラブルがあったときに現地の言葉を話せないと立場が弱く負けてしまうので、自分を守るためにも必死でしゃべってました汗

④凝り固まった価値観の崩壊

東京の大学にいたときは、私の師事していた先生の性格の影響と、もともとの自分の根暗な部分がハーモニーを醸し出してしまい、

ピアノが上手くない=ダメ人間ヽ(;▽;)ノ

私には価値がない私には価値がないワタシニハカチガナイワタシニハカチガナイ……

この方程式のもと、苦しみながらピアノを弾いていました。
この状況で迎える本番の恐ろしさといったら。。。((((;゚Д゚)))))))

海外に行って1番変化した思考というのは、

ダメな自分も失敗した自分も受け止める

ということ。

留学に際して、生活面でも音楽面でもあまりにも失敗の連続で、ダメな自分に対する耐性ができたのと、失敗→復活→失敗→復活の繰り返しでメンタルが強くなったということがあります。環境でいうと、周りのイタリア人や外国人の友達を見ていて、逆境や失敗があってもいちいち嘆かない、、一時は落ち込んでますが、それを引きずって自信喪失にまで落ち込まないで割と翌日にはあっけらかんとしていることが私には衝撃でした。

それに、改めて、世界中にはこんなにもたくさんのピアノの上手な人がいて、才能溢れる彼らと比較して落ちこむだけ無駄だと腹の底から腑に落ちたというか。。そこから、自分が出来ることに取り組むこと、一生、自己成長は続けようと決めてから、ピアノに向かうことが楽しくなり出しました。

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⑤自己肯定感の向上

自己肯定感が上がったというのは、前にお話しした、凝り固まった価値観の崩壊と繋がっていますが、そう、自己肯定感がえぐれるほどなかったのですが、その穴ぼこが少しずつ埋まっていった感じです。

私にとっては不思議だったことですが、、

日本にいた時は、かなり周りに守られて、敷いてくれたレールの上を走っていたため大きな挫折はなく生きていました。だけど自分のことが嫌いでたまらなかった。その上、大きな失敗がなかったため変なプライドだけは高くてどうしようもなかったです。

留学してからは、暗闇の中を手探りで道を進み、合ってるかも間違ってるかも分からない道を気合いだけで歩いていくうちに行き止まりになったり、落とし穴に落ちたり、、ほぼ失敗しかしてない状況だったにも関わらず、そんな行動してる自分が好きになってきたんですよね。。w 上手く行かなくても、人から決められたレールを生きていくより、自分の意思で取捨選択、決定をして生きていく自分の方が私は幸せを感じるようです。

いろんな価値観に触れて、いろんな文化を知って、たくさんの国の友達や先生と出会って、失敗して上手くいくこともあって、自分は自分でいいのかもって思えるようになりました。

今後の人生が苦しいままか、楽しく進んでいけるかの分岐点ともなりましたね。。

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⑧まで全部書こう思いましたが、時間がかかりそうなのでここで1回止めて続きは次の記事で書こうと思います。もしよろしければ次もお読みになって頂けたら嬉しいですm(__)m✨

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