手首の痛みになる具体的な原因

腱鞘炎にまでなってしまう前に、手の違和感、疲れ、痛みが現れます。
その時点で、原因を認識し、回避できると良いですね。

考えられる原因の例を上げてみたいと思います。

①鍵盤の押し込み過ぎ
②下方向にばかり弾いている
③拍にのれていない
④指の形が出来ていない
⑤手の大きさで対応できない曲を弾いている

以上5つです。

では1つずつ、細かく見ていきます。

鍵盤の押し込みすぎ

鍵盤は50g、深さ1cmの鍵盤。
重さ50gとは、1円玉50枚分です。そのくらいの重さで、鍵盤はすぐ底についてします。とても軽々ですね。
しかし、あたかも1kgもあるかのように、鍵盤の底についてもなお、もの凄い力で鍵盤を押し続けてしまう、ということがあるので、痛みや疲れを感じたら、一度客観的に自分が無駄に鍵盤を押し込んでいないか観察してみてください。

下方向にばかり弾いている

全ての音を下方向に弾いていると、非音楽的な上に手首に負担がかかります。
拍子というのは常に一定方向ではなく、例えば3拍子の場合、1拍目は強拍で下方向、2拍目3拍目は弱拍の上方向。

また、フレーズを感じて弾くと、毎回の音を下方向には弾く、ということににはならないですよね。その流れに逆らって、すべての方向を同じにすると、やはり身体に負担がかかってきてしまいます。

拍にのれていない

②でもふれましたが、拍というのは平面的でなく、一定方向でもなく、立体的です。つまり、生きています。
それを無視して機械のように練習してしまうと、どこかしらの手の箇所に自然でない力が加わり、音も固くなるし、故障が出てきてしまいます。

また、拍にのれていないということは、練習するときの集中する点というのが少しずれてしまっているケースが多いので、その点でも注意です。つまり、指が正しく動くように、に囚われてしまっているかもしれません。

指の形ができていない

指の第一関節が反り返っていたり、親指の付け根がへこんだまま弾いてしまっていると、バランスがとれないので、本来は力が抜けてるべき部分に力を入れて、それをカバーしようとします。
そうすると、その頑張ってくれてる部分に疲労がたまり、やがて痛みへと。。続いてしまいます。

本来の手の大きさでは対応できない曲を弾いている

このケースは子供に多いですが、そもそもの手の大きさ、可動域を超えた曲選びをしてしまうと、やはり問題が生じます。
コンクールなどで、どうしても弾くという決断をするのであれば、ぶっ通して練習しないこと、ストレッチなどで柔軟性を高める、指使いの工夫、奏法の細かな見直しなどをやっていくのがいいと思います。
ただ、将来のことを考えたら、痛みや違和感を感じた場合、いったん立ち止まって休む、ということが大事だと思います。
がむしゃらに、は一番よくないです。

腱鞘炎~脱力について考えたみた~

腱鞘炎の解決方法の記事で、“脱力”と”頭の使い方”が、鍵だと書きましたが、今回は、力を抜く、ことにフォーカスしたいと思います。

重さ50g、深さ1cmの鍵盤に対して、無駄にガチガチに力を入れて複雑な動きを毎日毎日していたら、それは身体が故障してしまいます。

だから、もちろん、無駄な力を入れない、いわゆる脱力は必要です。

ただ、完全なふにゃふにゃだったら、何も出来ないですよね。だって、座って腕を上げて、指をコントロールしないといけないですもの。

そこで、提案したい言葉が、”バランス“です。

ここで、普通に、真っ直ぐ立った状態を例に出したいと思います。

寝転んだ状態と比べて立ってる時って、ガチガチに力を入れてますか?

入れてないですよね。

それでも何故立った状態をキープできるのか?

立つだけでなく、どうしてがんばらなくても真っ直ぐに歩けるのか。。

それは

バランス

がとれてることによって、出来ているのです。

頭の先から、首を通って腰、足の先まで、骨が身体の真ん中に通っていて、バランスを保っているんですよね。

だから、たとえば、足首を本来のバランスから外れた角度や向きにしたら、立てないか、身体のどこかにギュッと負荷がかかり、それを続けていたら、その箇所は炎症を起こすかもしれません。

ピアノの場合も同様に考えることができ、

座った状態で足、腰から背中、肩やうで手首、指先に至るまでバランスがとれてないと、その本来のバランスから外れたものを補うために負荷をおっている場所が、だんだんと痛みに変わり、炎症を起こし、ひどくなれば腱鞘炎へと発展してしまいます。

そして、その本来のバランスというのは、身体が知っているので、先ずは無駄な力というものを認識して、それを取り除き、本来のバランス、を取り戻していく必要があります。

そして、そのバランスは、自分の中にある音楽的感覚とともに見つけ出すことが大切です。

腱鞘炎を治すために試したこと

こんにちは、コンムジカ野田です。
数年間悩まされてきた腱鞘炎。
ある時、この問題に向き合おうと決めてから、試したことと感想(すみません、結構ネガティブ)を書いてみたいと思います。

①ピアニストの動画を見まくって弾き方の研究、マネ
②奏法に関する本を読む
③アレクサンダーテクニックの講座に参加
④手の痛みについて記事を書いていた先生のレッスンを受ける
⑤指の強化に特化した先生のレッスンを受講
⑥分析能力を上げる

ピアニストの動画を見まくって弾き方の研究、マネ

まず、弾き方が悪いのでは、と考えて、たくさんのピアニストの動画を見て弾き方を観察したりマネしたり、イスの高さを変えたりしました。

参考になった面もありましたが、意識が表面の見た目、フォームだけにいくようになり、結果的に状況が悪化。
弾き方は、頭や身体の中で起こっていることの表れであり、弾き方がそうだから素晴らしくピアノが弾けてる訳ではないので、それを踏まえて参考にした方が良いです。

奏法に関する本や雑誌記事を読みあさる

偉大なロシア人のピアノ教師や、国内外のピアニストが書いた本には、奏法や教育について書かれていたりします。
また音楽雑誌では、手の故障や痛みの原因、腱鞘炎につい書かれてる記事もよくありました。ある時本棚の整理をしていたときに、ふと見かけた10年前の記事を見て、それを書かれた先生に突然連絡してレッスンをしてもらった事もあります。

根本原因の解決にはならなかったけど、後々、ピアノを弾くことへの理解ができてきたころに、仕入れた考えやアイディアが活きてきて、自分がレッスンをする立場になっても役立っています。

アレクサンダー・テクニックの講座に参加

②の雑誌を読んでいたときにアレクサンダーテクニックの存在を知りました。
身体や身体の使い方に関して、とても興味深く勉強させていただきました。
ただ、やはり身体の使い方だけにフォーカスしても根本的な解決にはならないかな、と思いました。

手の痛みについて記事を書いていた先生のレッスンを受ける

②で10年前の記事を偶然見つけてレッスンをお願いしましたが、力を抜いてタコのように。。汗 と言われて。。当時は参考には。。なりませんでした。。

その時は奏法よりもっと根深い問題を抱えていたのですね。。
今なら、先生が何をおっしゃりたかったのか分かります。

指の強化に特化した先生のレッスンを受講

紐つきの小さい重石袋を重さの段階を付けて作って、それを指につるして、指の独立や強化を目指したり、指を広げるアイテムを使ってみたり。

これは、役に立ったのか立たなかったのか、よく分かりませんが、数か月続けました。

腱鞘炎の直接解決にはつながらなかったです。

分析能力を上げる

元々、腱鞘炎の解決のために、とは考えてませんでしたが、本を読みあさったり、ピアニストやトップアーティスの考え方や情報に触れてると、彼らの音楽や作品に対する知識の深さにも触れるようになり、これは、もっと勉強しないと。。と焦り、先生についてやり直しました。

結果的にこれが、腱鞘炎解決の大きな要因になった訳です。

分析すると、必然的に頭その作品について考える時間が増えますし、ガチガチに力を入れて弾いていたものを完全に脱力したときに、どうピアノを弾けばいいのか、どこに集中して練習していけばいいのかの道しるべにもなりました。
そして、指は、頭にあるそれをコントロールして再現するもの、ということが実感として分かってきます。

さいごに

色々な分野の一流の人達がインタビューで語っていた印象的な言葉を記します。
その時の私にとっては衝撃的で、一生胸にあるものです。

ダニエルバレンボイムがインタビューで話してたのは

「ピアノを弾くというのは、頭、心、お腹が大事で指は20パーセントくらいの役割だ」

スーパー外科医

「手術は指先でなく、頭でやるんです」

一流バレリーナ

「脳が身体、指先まで全ての指令を出すのです」

レッスンアイディア「拍子を感じる大事さ」

拍子を感じて弾く。

当たり前のことですが、意外と見落とされがちな要素。

こちらが言わなくても素で出来る子もいますが、大半は助言が必要かなと思います。特に年齢が上がってきたり曲の難易度が上がってくると、この拍子感がなくなるケースをよく見ます。

平面的に、1,2,3 や1,2,1,2 と拍を数えることはあると思いますが、それだと、ビートを感じるのがなかなか難しいです。

そもそも、1拍目2拍目3拍目は平等ではないですよね。心臓の鼓動もドッくン、ドッくン、ととても立体的にリズムを刻んでます。この拍というのは音楽の心臓のようなものだと思うので、常に生きて音楽の奥底で存在するべきです。

基本的には、3拍子の場合1拍目に、4拍子の場合、1拍目と3拍目(1拍目よりは軽く)に重みがきますね。

2拍子 ⚫●   

3拍子 ⚫●・  

4拍子 ⚫・●・

あとは、縦の線を意識して、

2拍子 ダウン アップ

3拍子 ダウン アップ アップ

4拍子 ダウン アップ ダウン(軽) アップ

これを意識して、手拍子でやってみます。自分の手でもいいですし、子供と向かい合って、1拍目を自分の手で、2拍目以降は子供と先生の手を合わせてタッチする形でも楽しいです。

この他に、

童謡を歌って、拍子がある場合、無い場合の違いを比べたり、踊ったり。。出来る子は指揮をやってみるのも、子供に拍、拍子の大事さを認識してもらう手段となります。

♪今日も楽しいピアノレッスンを♪

レッスンアイディア「指の形-なぜ指先を丸くするのか」

ピアノを弾くときに大事な指の形。丸くしましょう、というのはよく言われることだと思うのですが、ただ形だけが丸くなってれば良いという認識だと、手首や腕がガチガチに固まる、という本末転倒な状況に陥ってしまうことがあるので、観察力と注意力を最大限使ってレッスンに望みたいところです。

画像で見てみます。まず悪い例から。写真だと分かりにくいですが、指先は丸い形ですが、手首がブロックされてる状態。

悪い例

次に良い例。これは指先は丸く、手首の力は抜けて腕も楽々です。

良い例

写真で見ると違いが分かりにくいですが、音を聞くと一目瞭然ですし、もちろん、触ってみると悪い例は石のようにカチカチになってるのですぐに分かります。

子供は先の悪い例に陥っていてもなかなか気が付きません。根が真面目な子ほど、丸く、にばかり囚われてしまいがちですので、先生が気をつけてあげないといけないところです。

なぜ指先を丸くするのか

音色のコントロール、手首、腕を自由にするために指先の第一関節が大事なんですよね。そこが、反ってしまっていると、身体、腕のバランスがとれず支えがなくなってしまうので、手首や前腕などでバランスをとろうとして、そこに疲労が溜まったり、痛みが出てきてしまいます。

自由になるために、多彩な音楽表現が出来る準備をするために、初歩での指の形の指導があるわけで、そこを潰してしまっては意味がありません。

脱力して指先を丸く

指先を丸くして力が入ってしまう子は、形だけに気をとられて、リズムや拍にのれていないことが多いです。呼吸も止まり音楽にのれていません。

呼吸、拍、フレーズ、腕の使い方と、総合的に見て指先のレッスンもしていきます。

♪今日も楽しいピアノレッスンを♪

Twitter
YouTube
Instagram